消費税増税・軽減税率の導入まで残り約2ヶ月となり、それに伴って「インボイス制度」の話を少しずつ聞くようになってきました。
全ての事業者に関係ある話ですが、特に免税事業者である場合や、免税事業者と取引のある会社は知っておかないと困ることになるインボイス制度。
今の内に要点を抑えておきましょう。
もくじ
インボイス制度は消費税をとりこぼさない為の施策
ご存知の通り、消費税は売上げ代金と共に事業者が一時的に預かり、自社が経費で支払った消費税額と相殺した差額を一括して国に納めています(仕入税額控除)。
しかし、免税事業者(過去2年の年商が1,000万円以下の場合など)であれば消費税の納税義務がなく、消費者から預かった消費税も実質売上金となっていました(益税)。
インボイス制度導入の1つの目的は、この消費税制度の欠陥を改善することです。
正式名称「適格請求書等保存方式」
本年10月から軽減税率が開始することにより、請求書の必要書式に「軽減税率対象商品を明示 (*対象商品がある場合)」と「税率ごとの合計金額」がプラスされます。区分記載請求書等保存方式と呼びます。
税額8%と10%をそれぞれに計算(税率ごとに合計した金額に税率をかけて端数処理)して、2つを合計する形で計算します。
なお区分記載請求書の発行は義務ではないので、従来通りの請求書でも問題はありません。
インボイス制度導入(2023年10月)までの準備期間として、この方式が4年間行われます。
経過措置の間、消費税の納税額計算方法は従来と同じです。(納税額 = 受け取った消費税額 – 支払った税額)
そして2023年10月に開始されるインボイス制度 正式には適格請求書等保存方式と言います では、さらに2つの必須書式が増え、納税額の計算方法が変更されます。
インボイス制度で変わる計算方法
2023年10月から始まるインボイス制度に先立ち、2021年10月から税務署で「適格請求書発行事業者」の登録受付け開始します。
この登録番号がインボイス制度に必須書式となります(もう1つは税率ごとの消費税額)。そして、適格請求書発行事業者は課税事業者しか登録できません。
登録番号が無いとどうなるのか?
適格請求書発行事業者に登録しないからといって直接的なデメリットはありません。特に、100%一般消費者を顧客としている場合はそこまで気にしなくても良いでしょう。
しかし、取引先が事業者となると間接的なデメリットが生じる恐れがあります。その要因がインボイス制度によって変わる、消費税納付額の計算方法の変更です。
インボイス制度における消費税の計算方法
課税事業者が適格請求書発行事業者に対して支払った経費の消費税分については、これまで通りの税額控除で相殺されます。
しかし取引相手が適格事業者でなかった場合、下記のとおり段階的に控除額が少なくなります。
仕入税額控除の経過措置
2023年10月から2026年9月末まで : 消費税額の80%が控除可能
2026年10月から2029年9月末まで : 50%控除可能
2029年10月から : 控除不可
非適格請求書発行事業者との取引では消費税の相殺ができず納税額が増える、さらに、仕訳記帳の際に相手業者が適格事業者なのか否かの確認も必要となるのでかなりの労力がかかります。
従って、それらを忌避するために契約解除となるリスクも懸念されます。(業種によっては適格事業者登録を義務づけてくるところもあるのではと。)
免税事業者がリスク回避のためにできる対策は、課税事業者となり適格請求書発行事業者に登録し、消費税を納税するしかありません。もちろん課税事業者になることで、これまで売上に計上できていた消費税分が無くなるわけなので、どちらが良いかは事業者ごとに異なると思います。
インボイス制度の要点まとめ
簡潔にまとめておくと、
- 適格請求書発行事業者の登録が必要。
- 「適格請求書発行事業所の登録番号」「税率ごとの消費税額」「税率ごとの合計金額」「軽減税率の明示」が必要
- 非適格請求書発行事業者との取引には仕入税額控除が適用できなくなる
となります。
インボイス対応のシステム・レジが必要に
請求書をシステム発行としている場合は、システムのバージョンアップが必要でしょうし、レジの買い替えが必要になる業種もあるでしょう(登録者番号などの必須事項を全て記入していれば手書き領収書でも問題ありません)。
大手レジメーカーのサイトなどを見てみると、軽減税率対応で販売しているレジは基本的にインボイス制度にも対応できるようになっているようですので、軽減税率補助金を利用するなどして今の内に対応しておくほうが良いかもしれません。
またAirレジやスクエアなどはかなり以前からインボイス制度について言及していましたので、おそらくシステム対応してくるだろうと思います。
エアペイや、スクエアの導入の場合、今ならキャッシュレス消費者還元事業の補助金が利用できる(軽減税率補助金との併用は不可。)ので、早めに申し込んでおきましょう。
いずれにせよ迷惑な制度でしかありませんが文句を言っても仕方ありません。直前になって慌てずにすむよう早めの対応を済ませておきましょう。